· 

おとぎ琵琶「牛さんのおまじない」について

何とも静かなゴールデンウィークが終わろうとしています。
私は相変わらずの引きこもり生活、よく食べよく眠り、おかげさまで体調は万全です。
しかし、これ以上お腹が丸くなるのを何とかしなければなりません。

 

さて、前回のブログで、Youtubeチャンネル「荻山泊水の薩摩琵琶動画倉庫」の開設をお伝えしましたが、そこに先週、新しい動画をアップしました。
「おとぎ琵琶『牛さんのおまじない』」。前後編の長丁場です。

(合わせて15分くらいです)

上が前編、下が後編です。

 

そもそも「おとぎ琵琶」とは何ぞや?といいますと、これは我々の流派・錦心流琵琶での呼び名です。

今からおよそ100年前、錦心流琵琶の流祖・永田錦心が、それまでは大人向けの演目ばかりだった琵琶を子どもたちにも楽しんでもらおうと、昔から伝わるお話を、分かりやすい口語の歌詞で歌う琵琶歌を作りました。これが「おとぎ琵琶」の始まりです。

当時作られた歌では「兎と亀」「浦島太郎」「文福茶釜」など、おなじみの昔話が多くあります。

 

私が初めて作ったおとぎ琵琶は、大阪・寝屋川の民話をもとにした「鉢かづき姫」。

試行錯誤の末に何とか完成し、演奏会でも歌わせて頂きました。

これに味を占め、さて、次に何を作ろうかと考えていた時、琵琶仲間から鶴の一声。

「日本の話だけじゃなくって、海外の話でも面白いんじゃないですか?」

その時、私の脳裏に浮かんだのは、その頃ドハマりしていた(今でもハマっている)国、アイスランドでした。

 

アイスランドは、北大西洋に浮かぶ小さな島に、8世紀頃、主にヴァイキングの人々が移住してできた国です。

北海道と四国を合わせたくらいの国土に、現在、約35万人の人々が暮らしています。

火山活動が活発で、溶岩が生み出す独特の地形や温泉、広大な自然が織りなす絶景でも有名です。

また、たいへん芸術が盛んな国でもあり、音楽の世界では、ビョークやシガー・ロスといった世界的に有名なミュージシャンを多く輩出しています。

一方、文芸活動も昔から盛んで、「アイスランド・サガ」や「エッダ」をはじめ、たくさんの物語が残されています。

そんな物語の中で、一時期、日本でさかんに紹介されていたのが「ブーコトラと小僧っ子(Búkolla og strákurinn)」というお話。

「めうしのブーコトラ」というタイトルで絵本にもなり、「世界むかし話」という全集にも収録されています。

(どうしてこのお話が取り上げられたかというと、日本の「三枚のお札」という民話に筋書きがよく似ていたからだそうです)

おまけに、図書館で見つけた本には、アイスランド語の原文と日本語の対訳という、ありがたすぎる資料が。

アイスランド語が読めない私、日本語文献を参考に琵琶歌を創作するとしたら、もう、これでしょう。

というわけで、2作目の題材はめでたくアイスランド民話となったのでした。

 

Youtubeの方にもあらすじは書いていますが、ちょっとだけ。

 

遠い北の島に、じいさんとばあさん、小僧と牝牛が住んでいました。

ある日、牝牛がいなくなってしまい、じいさんばあさんに命じられた小僧は、牛を探す旅に出ます。

ほうぼう探して歩き疲れた小僧は、道端の石に座り込んでこう叫びます。

「おいらの牛さんどこにいる どうか返事をしておくれ」

すると、遠くの崖から「モ~」と声が聞こえ……。

 

その後、彼らのピンチに、牝牛さんが不思議な力を発揮するのですが、それは歌の中でのお楽しみ。

 

アイスランドの美しい原野の風景と共にお楽しみ下さい……と言いたいところですが、

私の手元には、3年前の冬に訪れた時の写真しかなくてですね、積もってますね、雪。

でも、これはこれで美しいということで、ご容赦下さいませ。

ね、広いでしょう!

(シンクヴェトリル国立公園で撮影したものです)

ああ、またこの風景を見に行きたいなあ、できれば今度は雪が積もってない時期に。

しばし、遠い国に思いをはせながら、琵琶もお楽しみ頂ければ幸いです。

Contact

コードを入力してください。:

メモ: * は入力必須項目です